近年、金属サイディングはサイディング材のなかで最もシェアを伸ばしている外壁材です。
窯業サイディングのシェアは頭打ちである一方、金属サイディングは年々シェアを拡大させています。
すでにリフォーム市場では人気がある金属サイディングですが、新築住宅でも性能や意匠が評価され需要も増えつつあります。
もちろん、金属サイディングには他の外壁材とは異なる特徴があり、メリットやデメリットがあります。
今回は金属サイディングのメリットやデメリットにフォーカスして解説いたします。
ガルバリウム鋼板のつくり
金属サイディングは主にガルバリウム鋼板製品が多いです。
そして、金属サイディングはメーカー加工品で仕上げることが多いです。
メーカー加工品は断熱材一体型や遮熱フッ素塗膜などの付加価値の高い製品が多いです。
アイジー工業やニチハ、旭トステムなどの建材メーカーが取り扱っている金属サイディングです。
ここではメーカー加工品の断熱材一体型ガルバリウム鋼板の金属サイディングを前提にした解説となります。
金属サイディングのメリット
断熱性
金属は熱くなりやすく、冷たくなりやすいイメージがあります。
しかし、他の外壁材と比べて断熱材一体型の金属サイディングは断熱効果に優れています。
熱の伝わりやすさを表す基準に熱伝導率があります。
熱伝導率は、数値が小さいほど断熱性は高く(熱が伝わりにくく)、数値が大きいほど断熱性は低くく(熱が伝わりやすく)なります。
金属サイディングとその他外壁材との比較は以下の通りです。
窯業サイディングやALCの5倍から6倍ほど断熱効果が高いことがわかっています。
窯業サイディングと金属サイディングは厚みがほとんど変わらないので、圧倒的に金属サイディングの断熱効果が高いことが読み取れます。
さらにリフォームにおいて、金属サイディングは有利に働きます。
外壁カバー工法をおこなうことで外壁に空気層(通気層)を設けられます。
いわゆる外壁通気工法です。
外壁カバー工法を取り入れたリフォームでは、断熱材だけではなく空気層による断熱効果も得られます。
防音性
断熱材一体型の金属サイディングは防音性に優れています。
厚みが18㎜のニチハの金属サイディングは、80dBの騒音を28dBに下げる効果が確認できています。
(金属サイディング+通気胴縁+グラスウール+石膏ボードで成り立つ外壁の場合)
外壁カバー工法を取り入れたリフォームでは、さらに防音性能が高まります。
デザイン
シンプルなデザイン
金属サイディングのラインナップには、スパン系とよばれるデザインがシンプルなものがあります。
余計なものをできるだけ省いた飽きのこないデザインに共感を感じる人が増えています。
深みのある造形と次世代インクジェット技術
過去の金属サイディングは、シンプルさに定評はあったものの窯業サイディングに比べてデザイン性が劣るといわれていました。
しかし、近年の金属サイディングは、技術の進歩とともに多彩なデザインや繊細な色味を表現できるようになっています。
とくに造形技術や塗装技術などの進歩は著しく、より本物に近い表情を再現しています。
肌ざわりなどの質感は窯業サイディングに比べるとまだまだ劣りますが、昔に比べると各段にデザイン性は向上しています。
金属サイディングのデザインについて
割れない欠けない
金属特有の強度
金属は強度が高く、吸水や乾燥収縮、地震の揺れなどの影響が受けにくいです。
そのため、割れや欠けなどの破損、あるいは凍害について心配する必要がありません。
凍害とは、外壁材が水分を含み、その水分が凍結したり溶解したりを繰り返すことによって外壁材が破壊される現象です。
凍害は窯業サイディングでよく起こります。
昔に比べて凹みにくい
金属サイディングは凹みやすい歪みやすいという指摘があります。
この不具合は断熱材が入っていないサイディングやアルミサイディングによく生じます。
近年の金属サイディングは裏側に断熱材が貼り付けられており、鉄をベースにしたガルバリウム鋼板が現在の主流なので、耐衝撃性は昔に比べて格段に改善してます。
とくにスパン系の金属サイディングは、その形状からもかなり頑丈です。
凹みにくい金属サイディングとは?
メンテナンス性
標準品がフッ素塗膜
金属サイディングはメンテナンス性が高い建材です。
金属サイディングはフッ素塗料を焼付塗装で製造されています。
そのため、塗膜の耐候性が高く、色あせしにくいです。
シーリングが劣化しにくい
金属サイディングには窯業(ようぎょう)サイディングと同じく、窓廻りや外壁接合か所にシーリングを充てんします。
しかし、シーリングは役物(やくもの)を取り付けると隠れてしまうため、紫外線や雨風などの影響を受けません。
そのため、金属サイディングのシーリングは劣化しにくく、長年にわたり打ち替えをおこなう必要はありません。
またケイミューの「はる一番」のようにシーリングをつかわずに施工ができるサイディングもあります。
メンテナンス性が高いことは、リフォームにかかるトータルコストが少なくて済むことになります。
耐震性(新築時もしくは張り替え時)
金属サイディングの重量は、窯業サイディングの1/4程度、モルタルの1/10程度でとても軽いです。
そのため、建物の総重量が少なくて済み、耐震性の向上を図るには最も適した外壁材といってもよいでしょう。
地震が発生して揺れが生じると、建物の柱や梁、壁などに大きな負荷がかかります。
重量が大きいと遠心力が加わって負荷はさらに増幅します。
地震の揺れによる損傷が起こりにくいという点で安心な外壁材です。
とくに金属サイディングの中でもアルミサイディングは驚くほど軽いです。
張り替え時の負担が少ない
戸建て住宅は築40年以上が過ぎると外壁材の張り替えや増改築、減築を検討する時期です。
中には事故や大規模災害の影響で急な外壁張り替えを要するケースもあります。
もちろん、外壁材の張り替え工事は解体作業が伴います。
金属サイディングは構造上、他の外壁材に比べて簡単に剥がせます。
しかも金属の処分費はほとんど費用がかかりません。
素材が金属であることからリサイクルが可能で、場合によってはお金になることもあります。
将来、窯業サイディングやモルタル外壁を解体して処分すること考えれば、金属サイディングはとても経済的かつ合理的な外壁材です。
雨漏りが直る(カバー工法時)
外壁からの雨漏りで悩まれる方が多いです。
サッシ周りやベランダ周りなど、ありとあらゆる対策をしても雨漏りが直らないことがあります。
外壁カバー工法で空気層設けて金属サイディングを張ると、外壁からの雨漏りはほぼ解消されます。
張り替えよりは費用がかからないため、築後数十年が経過している場合は金属サイディングによる外壁カバー工法を検討するとよいでしょう。
窯業や樹脂に比べて価格が高い
金属サイディングは窯業系や樹脂系のサイディングと比較して価格が高いです。
新築時では樹脂サイディングの1.5倍程度、窯業サイディングの1.3倍程度、価格が高くなります。
ただし、モルタル(漆喰左官)やALC、プレキャストコンクリート、タイルの外壁に比べると価格は安いです。
リフォーム時では外壁塗装の2.2倍~2.5倍程度かかります。
そのため、外壁リフォームでは外壁塗装を選択される人が多いです。
しかし、長期的な視点から考えると、金属サイディングはコストパフォーマンスに最も優れた外壁材です。
金属サイディングの施工ができるのは、板金工事業者に限られます。
専門性が高い工事になるため、同じサイディングとはいえ窯業サイディングを専門とする工事業者にできる工事ではありません。
高い品質を確保するには、十分な知識と経験が伴った板金工事業者による施工が常に求められます。
この点は、ハウスメーカーや工務店などの元請け業者にも求められます。
たとえば、工務店で住宅の新築工事を依頼して、外壁にガルバニウム鋼板のサイディングをリクエストしても、拒否されることがあります。
あるいは、断る口実として高い見積もりが提出されることが意外と多いです。
最近はエンドユーザー(施主側)が金属屋根や金属サイディングのメリットを認識し、リクエストすることが多くなってきているため、新築業界にも変化の兆しが出始めています。
しかし、まだまだ板金工事の施工業者数や、知識や技術のボトムアップは不十分といえます。
金属サイディングの工事は、本来の性能を十分に発揮するためには慎重な業者選びが、最も重要なポイントといえるでしょう。
傷が付きやすい
金属サイディングの表面は、鋭利な刃物やカギなど先のとがったものなどで引っかけてしまうと傷が付きます。
錆びる
金属サイディングは金属素材である以上、錆びる可能性があります。
金属サイディングによくつかわれるガルバニウム鋼板は、錆びるといった意見をネット上で目にすることがあります。
もちろん、ガルバニウム鋼板も金属という性質上、錆びることが当然あります。
しかし、錆びることは稀なケースです。
また、錆びたとしても錆が拡大しにくい素材でもあります。
そもそも、錆びにくく、錆が拡大にしくい点が認められ、普及が広まった背景があります。
適切なメンテナンスを実施すれば、問題なく30年、40年と長く暮らせる家づくりができることは間違いないでしょう。
より高い性能を期待するなら、ガルバニウム鋼板よりも錆びにくいエスジーエル鋼板やアルミのサイディングを選ぶこともおすすめです。